カテゴリー「チャイ5」の記事

2023年3月23日 (木)

神奈川フィル @小田原三の丸ホール 

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毎度おなじみ小田原城。

自分の育った神奈川西部エリアに帰ってきてから1年。

小田原と平塚には始終行くようになりましたが、鶴首していたのがこのふたつの街に出来た新しいホールでのコンサート。

平塚のホールは先月に行きました。

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昨年オープンした小田原三の丸ホールでは、待望の神奈川フィルの演奏会♪

お堀のすぐそばの、まさに三の丸が位置した場所にできたホール。

長年、小田原の文化の中心だった市民会館が閉館し、その跡を継いだのがこちらのホール。

市民会館は何度かその舞台にも立ったこともあり、寂しいものですが、この美しい新ホールには今回まったく心奪われました。

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2階のホワイエから望めるお城と背景は丹沢連峰、この左手奥には箱根の山々も見えます。

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落ち着いた雰囲気のホール、先日聴いた平塚ひらしんホールよりも天井高で、音の広がりのよさを予見できる造り。

そして実際に聴いてみて、素晴らしい音響に感嘆。

フォルテからピアニシモまですべてがよく聴こえ、どんな強音でも楽器ひとつひとつが聴こえる分離の良さと、併せて音のブレンド感も豊か。
ずっと浸っていたい安心で気持ちのいい響きと聴こえの良さでしたね。
サントリーホールはいいけど、響き過ぎる。
実にちょうどいい三の丸ホールで、県立音楽堂を新しくしたような音だと思いました。
次は声やピアノも聴いてみないものです。

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  ブラームス    ハンガリー舞曲第1番、第5番

  ドヴォルザーク  チェロ協奏曲 ロ短調

  マーク・サマー  Jukie-O~ジュリー・オー
                     (アンコール)
     チェロ:宮田 大

  チャイコフスキー 交響曲第5番 ホ短調

    飯森 範親 指揮  神奈川フィルハーモニー管弦楽団

        (2023.3.19 @小田原三の丸ホール)

ブラームス、ドヴォルザーク、チャイコフスキーという同時期に活躍した民族色の強い作曲家たち。
しかも昨年のホールオープニングに来演した都響のオールブラームス・プログラムからの流れを意識して飯森さんが選んだものとありました。

それで付け足しとも思われたハンガリー舞曲の意味がわかった。
オーケストラを乗らせ、整える意味、観客も乗せるという意味では短い舞曲はよかったかも。
5番のラストではパウゼに溜めをつくって、飯森さん、観客を振りむいて、どう?っていう仕草をしましてリラックスムードも作り上げましたね。

前半の目玉、宮田大さんのドヴォコン。
ほんとは、エルガーが聴きたかったと思いつつ、実に久方ぶりのドヴォルザーク。
まさにメロディーメーカーだなと楽しみつつ聴きました。
1楽章はソロとオケがしっくりくるまで見守りましたが、楽譜なしの暗譜の飯森さんの指揮がなかなか的確でありつつも、ソロとの齟齬もややあったかな、と思いました。
でもですね、2楽章の牧歌的かつ詩的な演奏はもう絶品。
神奈川フィルの木管のソロの素晴らしさにみちびかれ、チェロソロが入ってくるところなんざ感涙ものでした。
この楽章でのソロとオケとの幸せな交歓の様子、聴いて、見て、本当に幸せな気分になりましたね。
終楽章も好調のまま、なんやら自然に囲まれた小田原の街の緩やかさと、温厚な機微をその音楽と演奏にと感じることができたのでした。
宮田さんの豊かで繊細なチェロの音色は神奈川フィルにぴったり。

アンコールがすごくて、ドヴォルザークを食ってしまったかも。
ジャズチェロというジャンルがあるかどうか知らないが、まさにそんな感じで、ファンキーさリズム、そして歌にあふれた佳曲で、ピチカート、胴たたきも駆使した技巧的な作品。
めちゃくちゃよかった、大拍手でしたよ。

後半は、神奈川フィルも出演のドラマ「リバーサルオーケストラ」でみなさんにすっかりお馴染みのチャイコフスキー5番。
ドラマではこの作品がちょこっとアレンジされて、運命的なあの動機と2楽章のロマンテックな旋律が随所で流れてました。
最終回、オーケストラの存続を決めるコンサートでは、まさにこの交響曲が勝負曲となり、晴れやかなラストシーンとなっておりました。
わたしの席のお隣には小学校高学年ぐらいの少女を伴ったお母さまがいらして、後半が始まるときに少女はお母さんに、「いよいよチャイ5だね」とささやいてました。
こうして、クラシック音楽も広がりを見せていくことに、音楽を聴く前から感動しちゃいました。

この曲が自分も小学生以来大好きで、もう半世紀以上はいろんな演奏で聴いてきましたが、神奈川フィルでの実演はこれが3度目で一番多い。
その神奈川フィルの演奏会も仕事のこともあり、生活環境の変化もありで、実に7年ぶりとなりました。
舞台に並ぶ神奈川フィルのメンバーのみなさん、半分以上は懐かしく、知悉の方々。
そんな神奈フィルメンバーが奏でるチャイ5は、ドラマでも田中圭演じる指揮者、常葉朝陽の言葉によれば、チャイ5はみんなに聴かせどころがある交響曲。
ほんとその通りで、スコアを見ると、どの楽器も、第1も第2もみんなまんべんなく活躍するし、めちゃくちゃ難しいし音符の数もはんぱなく多い作品。
それぞれのソロや聴かせどころでは、〇〇さん、〇〇ちゃん、頑張れとドキドキしながら聴く始末。
プロのオケだからそんな思いは不要だけれども、自分にとって神奈川フィルは、そんな思いでずっと聴いていたオーケストラだった。
聖響さんの時代のときの公益社団法人への法人格見直し時における存続危機に一喜一憂しながら応援したオーケストラ。

7年もご無沙汰してしまった反省と後悔も、このチャイ5の素晴らしい演奏で気持ちの高ぶりをとどめようがない状況になりました。
冒頭のあの動機を奏でる管楽の演奏から、こりゃまずい、涙腺が・・となりました。
オーソドックスな飯森さんの指揮にみちびかれ、観客もすぐにチャイ5に入り込みました。
アタッカで続いた2楽章、若いホルン首席の方、マイルドでブリリアント、完璧でした、心配した自分がバカでした。
めくるめくような甘味さと、感傷の交錯、ロシア系の濃厚さとは真反対にある神奈川フィルの煌めきのサウンドは、かつてずっと聴いていた音とまったく同じ。
石田組長はいなくても、小田原で聴いてるこの音は神奈川フィルサウンドそのものだった。
もうここで泣いちゃうと思いつつ聴いてた。
休止を置いて、まろやかな3楽章。
終楽章もアタッカで続けて、さて来ましたと会場の雰囲気、おっという感じになったのもドラマの効果でしょうか。
堂々と、でも軽やかに、しなやかにすすむ。
指揮の飯森さんも、ときにオケに任せつつ、ときにドライブをかけつつ、すっかりのりのり。
お馴染みの楽員さんたちが、隣同士で聴き合い、確認しあいつつ、体を動かしつつ、そしてなによりも楽しそうに演奏してる。
もうめちゃ嬉しい、テンションめちゃあがり。
そして、ラスト、コーダで金管の堂々たる高らかな咆哮、指揮者は指揮を止めてオケに任せ、その開放的なサウンドが三の丸ホールの隅々に響き渡る。
それを五感のずべてで感じるかのような喜びたるや!
込みあがるような感動と興奮を味わいつつ終演。

声掛けはお控えくださいとの開演前のアナウンスに、ブラボーは飛ばせませんでした。
もう、いいんじゃね、と思いますがね。



飯森さんの合図で、撮影タイム30秒。
しかし、みなさんあわてて起動しても、なかなか間に合いませんねぇ(笑)
こんどは起動タイム1分、撮影タイム30秒でお願いね。

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こちらは1年前の城址公園の桜。

2022年4月8日の撮影ですが、今年はその頃にはもう散ってしまうでしょう。

桜の花は儚いですが、音楽はずっと変わらず、わたしたちの傍らにいてくれます。

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神奈川フィル、また聴きに行こう。

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2020年5月19日 (火)

チャイコフスキー 交響曲第5番 アメリカオケ

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5月の青空に鯉のぼり。

この連休中に、ひと気の少ない東京タワーの足元には、今年もたくさんの鯉のぼりが泳いでました。

東日本大震災の折には、岩手県大船渡市にエールを送るため、「さんまのぼり」も登場。
今年も元気に泳いでました。

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自粛による経済活動の低下で、空も空気も澄んでいて、皮肉なものです・・・・

  チャイコフスキー 交響曲第5番 ホ短調

世界のオペラハウスが発信してくれる豊富なオペラ映像に、日々うつつを抜かしてますが、そんな合間に聴き親しんだ名曲をしみじみと、いや、これでもか、とばかりに聴いてみた。
オペラばかり観てると、たまに聴くシンフォニー作品は、メチャクチャ新鮮だった。

全体に古めのものばかり、ステレオ録音前提で、いまは呼ばなくなったアメリカの5大オーケストラで。

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    ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団

         (1959.1.25 @フィラデルフィア)

オーマンディの古い方、懐かしいCBS録音。
ジャケット写真は借り物ですが、子供の頃、レコード店でよく手にとって眺めていたのを覚えてる。
2枚組、3,300円のダブルシリーズ。
ずっとあとに、廉価盤になったものを聴いたが、ちょっとキンキンする音だったけど、でもそこに煌めくフィラデルフィアサウンドが、これか、と刷り込まれるような明るい音色があった。
CD化されたものは、もっと落ち着いていて、堂々とした歩みを感じさせる貫禄の演奏に感じた。
後述のセルもバーンスタインもそうだけど、CD化によって、イメージを変えてしまうことが多いのはCBS録音だったりします。
後年のRCA録音は未聴、いずれ聴きたいけど・・・

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  ジョージ・セル指揮 クリーヴランド管弦楽団

          (1959年10.23 @クリーヴランド)

懐かしいジャケットで、セル&クリーヴランドの芸術だったかで、廉価盤になったときに聴いたもので大学生だった。
マスタリングされたCDを聴いたのは、最近のこと。
これもイメージ一新。
硬派なきっぱり型の演奏はかつて思い通りだけど、思ったより潤いがあり、とても豊かなチャイコフスキーだと見直した。
アゴーギクも効かせ、思わぬ効果も多々生んでるし、最終章の有名なシンバル追加も新鮮なもんだ。
こういうチャイコフスキー5番も実にいい!
セル&クリーヴランドが大阪万博で来日して、今年で50年。
帰国後亡くなってしまったセルの没後50年でもあります。
小学生だった自分、テレビ放送された、シベリウスの2番が大いに気に入って、亡くなった志村けんさんの、アイーンじゃないけど、胸のあたりで左手を水平にして、オーケストラをコントロールするセルの指揮ぶりを真似たりしたものです・・・
なんだか、いろんな思いが渦巻くセル&クリーヴランドのチャイコフスキー5番でした。

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  レナード・バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック

      (1960.5.16 @NY)

このジャケットが好き。
バーンスタインの旧盤は、CBSソニーが出したベストクラシックという自社レーベル音源総動員のシリーズものの1枚で、中学生だった自分は、ワンコインで送ってもらえた「音のカタログ」で、この演奏の4楽章冒頭を何度も聴いたものです。
ここだけ、ともかく、懐かしーーー
 CD化されたものを聴いたのはDGの新盤を聴いたあと。
悠揚たる新録音に比べ、まったく違うと感じてしまう、自由自在なフーダム演奏は、思わずずっこけたり、おいおい待って~とか、聴く側のワタクシが追いかけるようなイメージの演奏。
思いのたけを、思い切りその音楽にぶつけて、そのまま音にしてしまうバーンスタンの凄さをここでも感じる次第です。
でも、やりすぎ、疲れちゃう、のも歳を経た自分には感じさせるもので、後年のDG盤もいまの自分にはそんな風に感じます。

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   サー・ゲオルグ・ショルティ指揮 シカゴ交響楽団

     (1975.5.15 メディナ・テンプル、シカゴ)

これぞ、ショルティ&シカゴと思わせる肉太な演奏。
アバドやジュリーニの指揮でシカゴが好きになり、それとは違う骨太シカゴの音を聴いて驚いた70年代。
このコンビのベートーヴェンの交響曲は、全部集められなかったけど、安い装置が実によく鳴る録音の生々しさもさることながら、音楽そのものを混じり気なく聴かせる真っ直ぐな演奏だった。
そのイメージどおりのストレートなチャイコフスキー。
カラヤン&ベルリンフィルの磨き抜かれた嗜好品のような演奏とはまた違う、高度なオーケストラの機能性の行き着いた到着点のような演奏に感じる。
77年発売当時のレコ芸の広告を載せたのは、ここに書かれたことが、このショルティ盤のイメージそのものだからです。
後年の再録音では、もっと柔和になってしまうが、70年代のこのコンビはすごかった。
シカゴの高性能で完璧なアンサンブルを縦横無尽に、猛獣使いのようにコントロールしつつ、その音楽は実に緻密で豊か。
スコアから外れたことはひとつも行っていない模範演奏。
そう、完璧なる模範演奏なんです。
久しぶりに聴いて、ほんと感動しました。

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  小沢 征爾 指揮 ボストン交響楽団

     (1977.2.16 @ボストン)

われらが小澤さん、ざーさん、@70年代、in ボストン。
これらの簡略言葉で、その演奏の様子を書けてしまう自分ぐらいの世代。
 小澤さんはカッコよかった。
同朋日本人が、アメリカのメジャーオケの指揮者になり、メジャーレーベルの看板指揮者になり、ナイスな録音を次々に繰り出していた70~80年代。
高校時代、下手クソながら、クラブ活動のオーケストラに所属させていただいた。
メンバーたちと箱根に遠足(お膝元だったので)したとき、アメリカ人夫妻がいて、果敢な高校生たちは、どこからいらしたんですか?と声をかけた。
そしたら、ボストン!とお答えになった。
すかさず、ワタクシは、オー、セイジ・オザワ、ボストン・シンフォニーとへなちょこながら発し、ご夫妻は、オールライト!ベリーグッド!と満面の笑みでお答えになりました。
 この時ほど、小澤さんの存在が誇らしいという思いをしたことがありません。

3度の録音のある小澤さんのチャイ5の、真ん中の音源。
シカゴ、ボストン、ベルリンフィルとすごいオケとの録音歴を持つ小澤さん。
果敢な雰囲気だけど、以外に慎重なシカゴ盤、練れに練れた柔軟姿勢、オケが抜群にうまいベルリンフィル盤。
それらに挟まれたボストン盤は、細やかで、目の行き届いた欠点ゼロの美味なる演奏。
無駄なことなく、妙な味付けもなし、流麗ななかに、チャイコフスキーの音楽が爽やかで潤いに満ちたものであることを認識できます。
第2楽章は、後年、侘び寂びにやがて行き着く小澤さんの片りんを感じさせますが、ボストンの音の美しさは例えようもないです。

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こたびの5番聴きまくり、いまの心境や状況からの自分のランキング。

 セル → ショルティ → 小澤 → オーマンディ → バーンスタイン

でも、ところと状況がかわれば、もしかしたらまったく逆になるかも(笑)

アメリカのオーケストラ、5大オケなんてのはもう古くて、ロサンゼルスとサンフランシスコも同等の実力だし、デトロイト、ピッツバーグ、シンシナティ、セントルイス、ダラス、ヒューストン、シアトル、ミネソタ、ナショナル、アトランタ等々、みんな凄腕で、彼らのチャイコフスキーも追いかけたいな・・・・

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美しき5月、とはいかなかったけれど、なんとか切り抜けて来年の鯉の飛翔もみたいと思います。

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2017年2月26日 (日)

チャイコフスキー 交響曲第5番 ネルソンス指揮

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2月26日、東京マラソン。

どうしてもこの先に行かざるを得なかったので、観戦。

いやはや、スゴイですよ!

ぎっしりの人の波が、ずっとずっと続いてる。

ピカチュウも、力士も、セーラーも、コスプレたくさん。

沿道も応援する人たくさん、企業などは、自社の前で、よさこいや、チアリーディング、笛や太鼓の鳴り物で、にぎやかなこと!

平和でなにより、お祭りであります。

来年は、ちょっと鍛えて出ちゃおうかしら。

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下を歩いていたら、偶然に、林家たい平師匠を真近に見ましたよ。

こんなビックイベントだから、交通規制も大変で、警察も物騒なことのなきよう、かなり厳重な様子でした。

で、東京マラソンとは、関係ないけど、久しぶりに、アレ行っちゃいます♪

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   チャイコフスキー  交響曲第5番 ホ短調

      アンドリス・ネルソンス指揮 バーミンガム市交響楽団

                       (2008.10.16 バーミンガム)


いま、あげあげ、人気実力急上昇中の指揮者ネルソンスの初期の頃の録音。

1978年生まれだから、30歳。

多くの名音楽家を排出しているラトヴィアの出身。

この録音の年に、バーミンガム市響の音楽監督になり、その後はもう破竹の勢いの大活躍をみせるわけで、録音もたくさんあるし、38歳にして、この人は、これからどうなってしまうんだろうと思ってる今日この頃なんです。

バーミンガムとのものは、この演奏しか聴いたことがないけれど、私は、バイロイトでの「ローエングリン」と、ルツェルンでのアバドの追悼演奏会で、この指揮者のことがとても気に入ってしまった。

そして音楽監督となったボストン響との演奏を、いま、ネット上でいくつも聴いていて、そのことはまた後日に記事にしますが、それらの演奏がまたピカイチなんです。

 ネルソンスの指揮は、奇をてらうところが一切なく、オーソドックスなものなんだけれど、醸し出される音楽の鮮度がとても高くて、どこもかしこもイキイキと躍動し、そして磨き上げられた音色の美しさも保っている。
このバーミンガムとのチャイコフスキーも堂々たる演奏で、現在のボストンとの共演からすると、ちょっと荒削りなとこがあって、そこが、若き日のヤンソンスみたいなところを思わせる。

 そうそう、指揮する姿も、譜面の置き方も、師ヤンソンスそっくり。

スマート・スタイリッシュな第1楽章、むせぶようなホルンが印象的な第2楽章、流れるように美しい第3楽章、思わずゴツゴツした感じの終楽章、しかも、かなりリズミカルで、乗せられてしまう。

 バーミンガムのオケも、かなり巧いし、金管も実によく鳴っている。
ラトル、オラモ、そして、ネルソンス、そのあとが女性指揮者のミルガ・グラジニーテ=ティーラ。
彼女は、ネルソンスと同じく、30歳にして、バーミンガムの指揮者に。
しかも、同じバルト三国のひとつ、リトアニアの出身。
昨年のプロムスで、チャイコフスキーの4番を指揮するのをネット視聴したけれど、堂々たるもので、爆発力もたっぷりだった!

 大巨匠の時代はもう去り、いや、その現存する大巨匠たちも、若い人たちの音楽を意識したかのような、若々しい音楽造りをするようになった気がする。

さて、ネルソンスは、今年、ゲヴァントハウスの指揮者に就任し、ボストンと掛け持ちとなる。
DGは、ボストン響とショスタコーヴィチを、ゲヴァントハウスとブルックナーを、ウィーンフィルとベートーヴェンを、それぞれ録音する予定と聞く。

ますますもって楽しみな指揮者であります。

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2016年11月 5日 (土)

チャイコフスキー 交響曲第5番 K・ペトレンコ指揮

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芝浦埠頭からみた、秋の日の東京湾、夕方のレインボーブリッジ。

そして、あっという間の11月。

また歳を重ねる月だし、思えば、ていたらくのこのブログも、開設11年となる月。

さてさて、秋晴れの高い空をみながら、ほんとうに久しぶりにあの曲をば・・・・。

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  チャイコフスキー 交響曲第5番

   キリル・ペトレンコ指揮 バイエルン国立歌劇場管弦楽団

                    (2016.9.20 @ミュンヘン)


ネットでライブ配信されたものを聴き、録音しました。

日本では、まだ謎の多い、次期ベルリンフィル芸術監督、キリル・ペトレンコ。

バイエルン国立歌劇場の音楽監督であり、バイロイトでもリングを指揮していたので、欧州から遠い日本では、オペラの指揮者という感じを持っているが、ドイツ国内では、かなりのコンサートも指揮してますね。

youtubeでは、かなりの放送音源が見つかりますよ。
シェエラザードや、ショスタコ7番、ツェムリンスキー抒情交響曲など、実に興味深い演奏がありまして、そのレパートリーの鮮やかさもさることながら、真摯でかつ新鮮味にあふれた演奏は、その豊かな才能の片鱗を知ることができます。

わたくしは、あと、3年間のバイロイトのリングを全部PC録音して、ときおり聴いていたけれど、いままで聴こえなかったフレーズやライトモティーフのうまい響かせ方など、もしかしたら、昨年のベテラン、ヤノフスキよりも面白く聴けたものです。

そして、ほやほやのライブでは、手兵のバイエルンとのチャイ5。
この日の演目は、リゲティのロンターノ、ダムラウ独唱の「4つの最後の歌」、そしてチャイコフスキー。

 このチャイコフスキー、実にすばらしい演奏なのだ。

乗りやすい、ほどよい疾走感を伴った、くどさのない歌いくちのうまさ。
強弱の巧みさ、わずかに揺らすテンポ。

2楽章では、スムースに流れるなか、美しく光る抒情の輝きが。
それと、すべての音が、万遍なく聴こえるすっきり感も。

終楽章は、そこに皆が求める、カッコよさも。
終結部コーダの前、思いのほか長い休止。
そして、思い切り謳歌する大主題は、聴くこちらも思い切り気持ちがいい。
エンディング、じゃじゃじゃじゃぁん!があまりにステキだ。

聴衆のブラボーも半端ない。

あと、オーケストラの明るい音色と、機能性の豊かさ。

ミュンヘンのオーケストラは、みんな巧い。
ヤンソンスの放送響、オペラのペトレンコ、フィルハーモニーのゲルギエフと豪華な顔触れだ。
かつての昔も、クーベリック、サヴァリッシュ、ケンペの3人がミュンヘンにいた黄金時代があったし。

ということで、キリルの方のペトレンコ、あらたな正規音源が待ち遠しいですね。

来年9月には、国立歌劇場と来演して、「タンホイザー」を指揮しますよ。
しかも、タイトルロールは、フォークト。

ということで、お久しぶりのチャイ5でした。

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2015年8月 6日 (木)

チャイコフスキー 交響曲第5番 ドゥダメル指揮

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暑い暑い8月の夏の小便小僧。

今月は、完全夏装備の秀作でした。

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褐色の肌もさらしてますね。

この姿を拝見して、うだる暑さも、ちょっと和らぎましたよ。

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  チャイコフスキー  交響曲第5番 ホ短調

    グスターヴォ・ドゥダメル指揮 ベネズエラ・シモン・ボリバル交響楽団

                      (2008.1 @カラカス)


今月の月イチは、チャイ5。

熱~い演奏で。

もうみなさまご存知の、中南米は、ベネズエラが誇るオーケストラと、そのオーケストラとともに育った指揮者による演奏。
その指揮者、ドゥダメル君は、あれよあれよという間に、齢34歳にして、ベルリンフィルの首席指揮者候補にもなってしまった、ありあまる才能の持ち主。

欧米の専売特許だった、西洋音楽たるクラシック音楽の演奏の裾野が、全世界に、しかも均一なほど、高度な演奏技量を伴い広まった。
21世紀になってから、ますます痛感した感覚です。

その最たるものが、ベネズエラのこの指揮者とオーケストラ。

1821年に、スペインから独立したベネズエラは、その後も幾多の変遷を経て、いまに至るまで、政情も不安定な国なのですが、その経済を支えてきたのが、OPECにも加盟し、産油国として原油輸出国であったこと。
 しかし、豊かな富は、ごく一部に限定され、貧困層を多く抱える構造的な問題を常に抱える国でもありました。
 しかし、その貧困層の児童たちに、楽器を持たせて、「エル・システマ」という音楽教育プログラムを実践し、多くの音楽家とユース・オーケストラを国家基金のもと、生まれることとなりました。
この1975年から始まったシステムが生み出したコンビが、ドゥダメル&シモン・ボリバルですな。

「シモン・ボリバル」は、19世紀、ベネズエラを始め、ボリビアやペルーなどの中南米5カ国の独立を導いた英雄の名前、そのものです。

その彼らが、初来日したのが、2008年12月で、わたくしは、NHKのテレビ放送を観劇しましたが、舞台にはち切れんばかりの、超大編成にもかかわらず、その完璧なまでのアンサンブルの精度の高さは、アクロバティックでありながらスポーツ的な快感をも与える、そんな演奏ぶり。
さらにスペイン語が言語であるラテン系の典型、喜怒哀楽をまともに感じさせる音色と演奏姿は、後半に進むにつれ、見ていて、クラシックのコンサートが、お祭りのようなワッショイ大会に変貌してしまう、そんな熱いものでした。
 その時の曲目は、「ダフ・クロ」と「チャイ5」なのでした。
そして、熱狂的なアンコールは、youtubeなどでも、見ることができると思いますので、体験してみてください。

この来日公演より11ヶ月前の本拠地でのライブが、今日の音盤。

来日公演を保存してありましたので、聴き比べましたが、全体の流れは、ほぼ同じ。
でも、情熱の塊的な、もの凄さは、来日公演の方に強く感じます。
それでも、DG盤でも、終楽章のド迫力と、血沸き肉躍る熱き演奏には興奮できます。
そして、第2楽章のこれでもかというばかりの思い入れの込め方。
テンポを結構、揺らしますが、あざとさは感じさせず、ナチュラルなのは、ドゥダメルの才能でありましょう。
 音楽の楽しさを、聴く側以上に、演奏する側が享受しているという、あまりに好ましい典型であります。

ドゥダメルは、この後、エーテボリ響や、ロサンゼルフィルの音楽監督となり、ベネズエラを出て、世界的な指揮者として引っ張りだことなりましたが、ことに、ロスフィルとの相性は抜群のようで、ウィーンやベルリンよりも、のびのびとして感じます。

一方、シモン・ボリバルは、多忙となったドゥダメル君が、今後も、このオケを率いることができるかが鍵だし、ポスト・ドゥダメルが問題となるでしょう。

しかし、それ以上に気がかりなのが、ベネズエラという国自体の存在。

原油価格の暴落で、まともに影響を受け、国内は慢性的なインフレ。
音楽は、心を救い、満たすことはできるが、物理的な豊かさは、どうなるのだろう。
1999年に誕生した、チャベス大統領政権が、まさに独裁政権として、反米路線を敷いて国を率いてきたが、そのチャベスも2013年に死亡し、いまは暫定的な政権のもとにあります。
 さらに、反米という絆で結ばれたカリブのキューバが、アメリカと国交回復して急接近。
まさに、梯子を外されてしまったベネズエラに、さらに、急接近する中国。
もともと反米だから、IMFからの借款をできない故、その中国からは、4.5兆もの借款を受けていて、ベネズエラのデフォルト説もあります。
その中国自体も、どうなるかわからない状況。
世界経済と政治の火種は、ベネズエラにもあるんですね。

そんな状況下の若者たちのオーケストラは、どうなるんでしょう。
ドゥダメルも、その立場上、やむないことでしょうが、独裁政権との強い関係もときに批判を受けたりしているようで、なんだか、とっても寂しい思いです・・・・。

そんなこんなを、チャイコフスキーを聴きながら、思ったりもした、暑い夜でした。。。。

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2015年6月10日 (水)

チャイコフスキー 交響曲第5番 小泉和裕指揮

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6月の小便小僧は、これまた、お約束の雨ルック。

梅雨入りして、すぐの中休み。

日が出ると、雨合羽も蒸し暑そうね。

でも、小便水が涼しげだったり・・・

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はい、うしろ。

レインシューズ、かわいいね。

左右の山手線、京浜東北線、うまく撮れましたよ!

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   チャイコフスキー 交響曲第5番 ホ短調 op64

     小泉 和裕 指揮 ロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団

                       (1988.2.27@ロンドン)


月イチ、今月は、チャイ5の番です。

幻想に、チャイ5、いつ聴いても楽しい。

オーケストラ好きなら、当然のことかもですが、ともに、昔から大好きだった。

ポケットスコアも買って、一生懸命に聴いたし、唯一演奏できたフルートを、レコードに合わせて、むちゃくちゃになりながら吹いたし、指揮の、ものまねなんかも、まんま、カラヤンやアバドしましたよ(笑)

そのスコアは、まだあるけれど、チャイ5は、昭和48年の版で、たったの350円ですよ。

ちょうど、そんな頃、小泉和裕さんが、カラヤン指揮者コンクールで1位を取る快挙を成し遂げました。

1973年のこと。
課題曲は、たしか、「トリスタンとイゾルデ」だったかな?
それとも、優勝後、すぐさま招かれてベルリン・フィルを指揮したときが、トリスタンだったかな?
飯守泰次郎さんが、バイロイトで副指揮者として活躍していたのもその頃で、N響に招かれて指揮したのも、やはりトリスタンで、ごっちゃになってるかも・・・・

で、1974年、今度は、夏のザルツブルク音楽祭に登場して、小泉さんは、ウィーンフィルを指揮することとなりました。
カラヤンとベームという大巨匠に、アバドやメータが常連、そして、ムーティやレヴァインが同時期に登場し始めた頃。
残念ながら、小泉さんの登場は、この年だけでしたが、翌年からバーンスタインや、小澤さんが登場したものと記憶します。

そして、ウィーンフィルとの、そのプログラムは、ハイドンの92番「オックスフォード」と、チャイコフスキーの5番なのでした。
演奏は、概ね好意的に迎えられ、その年の暮れには、NHKFMでも放送され、わたくしも、この耳で聴くことができました。
ハイドンはともかく、チャイコフスキーでは、決して、この曲を、当時まだそんなに演奏しなれていなかったウィーンフィルを、慎重ながらも、うまくリードして堅実に仕上げていたものと思いました。
当然に、カセットテープに録音しましたが、のちに、そのテープも上書きしてしまい、いまや残念極まりないことにございます。

その後の、小泉さんの活躍と、内外のポストに関しては、ここに記すまでもないですね。

14年後、ロイヤル・フィルを指揮して、お得意のチャイコフスキーの後期交響曲を録音しました。

当時、国内では、クラウンかどこかから出ましたが、いま聴く、このRPOレーベルの1枚は、驚くことに、楽章ごとのトラックがなくって、1曲まるまるなんですよ。
48分27秒。
ジャケットには、楽章ごとのトラック表示がありますが、わたしの装置では、トラックを読みとりませんでした。
このレーベル、以前も、マーラーの5番を、プレヴィン指揮と表示していて、実は、井上道義の指揮だった、とか、非常に信頼が薄いのよ。
ロイヤルなのに、いかんでしょ。

で、この演奏、録音場所が教会ということもあって、響きが過多で、高音が少しキンキンします。そして厚みが、ちょっと薄くって、その点で、演奏の良さが減点されてしまいます。

小泉さんらしく、手堅く、かっちりした構成を感じさせつつ、各所に目配りの行き届いた、安心安全の演奏。
ロイヤルフィルも、きっと演奏しやすかったのでは。
そして、手馴れた曲らしく、お馴染みの各フレーズを、とても念入りに歌わせていて、すみずみまで、丁寧な歌い回しです。
ひとつとして、気の抜けた音がしてないのも、演奏会で聴く小泉さんと同じ。
 しかし、オーケストラが、ニュートラルにすぎるものだから、個性の表出という点では、ちょっと薄いかもしれません。
もっと、分厚く鳴らしてもいい場所があるし、テンポも、もう少しいじってもよかった場面もあります。

そんななかで、2楽章が実にステキですよ。
カラヤンのように、聴かせまくりの、お化粧しまくりの美人タイプじゃなくって、スッピンでも、この曲は、こんなにキレイで、美しいの、という典型の演奏。
指揮者とオケが、音楽に感じ入りながら無心で取り組んだ、音楽の良さだけを感じさせるものに思います。

終楽章は、もっと盛り上がってもいい。
でも、堂々としてないとこ、こけおどしにならないところがいい。
そして、エンディングはカラヤンに似てる。

小泉さんには、川瀬さんが、この前やったばっかりですが、神奈川フィルで、ここ数年のうちにやって欲しいな。
わたくしにとっても、思い出に残る、チャイ5を、横浜の地で、是非、成し遂げて欲しいです。

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2015年4月 1日 (水)

チャイコフスキー 交響曲第5番 カヒッゼ指揮

Hamamatsucho201504_a

4月の小便小僧さんは、ほれ、ごらんのとおり、桜を背負った新入生。

天気のいい日でしたので、まさに、ぴっかぴか。

Hamamatsucho201504_b

特製、小便小僧クンバージョンのランドセルも、カワイイ。

日本は、年度替りで、なにかと、新鮮なムードですが、海外、ことに欧米は、今年は、今時分が、イースターで、ロングバケーションをとるご家族も多く、都内は、欧米系の子供連れの家族がたくさん見受けられます。

ともあれ、新入生さん、新入社員さん、新人さん、すべての皆さんの、ご活躍、ご健勝を、お祈りいたします!

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  チャイコフスキー 交響曲第5番 ホ短調

    ヤンスク・カヒッゼ指揮 トリビシ交響楽団

                  (1999.12 @トリビシ)


今月の月イチは、チャイ5で。

それも、謎の指揮者、謎のオケで。

 この指揮者、このオケ、そして、レーベルは、MAZUR MEDEIAというもので、いまは、いずれも、まったく機能してなくて、散発的に復刻されてはいますが、かつては、秋葉原あたりのソフマップとか、こちらも、いまや、クラシックCDを購入するに、まったく相応しくない店で売られていて、ワタクシも興味シンシンで、いくつか購入したものでございます。

ナヌーイとか、リューブリアーナ響とか、さらに怪しげな組み合わせよりは、数等に、まっとうな演奏と録音のメンバーですよ。

 いや、むしろ、変なオケを聴くより、ずっとうまいし、妙に味わいがある。

カヒッゼ先生は、1936年生まれの2002年没の、グルジア出身のソ連邦時代の指揮者で、トリビシ響は、彼の出身国の首都で、彼が造り上げたローカル・オーケストラであります。
いまでは、活動していないそうですが、ともかく、遠い日本で聴く、異世界のオーケストラは、面白いものです。

ソ連人として、活躍していたカヒッゼさんは、みずから、グルジア響を創設し、その指揮者となり、同時に当地の歌劇場も統括し、ソ連邦の一員として、グルジア地区に文化貢献しました。

 ソ連崩壊後、1991年に独立したグルジアは、そのすぐあとの、ゴルバチョフの右腕的存在であった、同地出身のシュワルナゼが大統領となり、西側の国として、脱ロシア、親EUに根差した国となってます。
 その立地上、ロシア、トルコ、アルメリアなどに囲まれ、かつ、黒海に面することから、ワインの産地であったりと、とても複雑な国情に変わりはないようですが。

 だから、カヒッゼ先生も、トリビシ響も、そんな背景を得て、ロシア的な重厚さや、威圧感、
右に倣え的な統率感は、かなり少なめで、不思議な明るさと、明快さ、そして、おおざっぱな雑加減が、いい感じに作用している感じが、妙に新鮮なのです。

大国に飲みこまれてしまった、近隣諸国の個性は、おいそれとは回復できませんし、へたすれば、飲まれてしまったゆえの、その個性も本来、弱かったのかもしれません。

 音楽を聴きながら、その各国の事情や、歴史背景をあれこれ探るのも、これまた、音楽を聴く楽しみです。

 さて、ソ連時代から、独立国までを、駆け抜けたカヒッゼさんのチャイ5。

熱すぎず、寒すぎず、かといって、凡庸でもなく、不思議な味わいのある演奏です。

1楽章は、陰影ありすぎのクラリネットの開始に、ちょっと揺れる感じの他の木管に、おおっと思いつつも、意外とストレートに進行する流れ。
緩急は、この楽章をはじめ、かなりついてまして、気が抜けない。

2楽章は、思いのほか、ストレートな解釈。
録音のせいか、風呂場から聴こえるようなホルンに、妙に感心しつつ、やりすぎ感も漂う吹き方で、その印象は、のちの展開にも継続。
しかし、それらも、中途半端で、もっとやるなりゃ、やりゃぁいいのに・・・・って感じ。
オケは、でも、うまいぞ!

3楽章は、可も不可もなし。
思いのほか、なめらかな展開じゃん。

4楽章、激しいティンパニの殴打。
克明な展開ながら、一音一音を、丁寧にあつかっていて、突っ走る感は少なく、どしどしと進行。
でも、ロシア的な、おらおら感や、壮大な大地感はなくって、サバサバ感が優先。
このあたりも、不思議な感覚で、とりとめないままに、曲は進行して、終わってしまう。

個々には、オモシロおかし的な場面が随所に噴出しつつ、全体の流れが作れず、これといった印象を、聴き手に与えることができない、そんな典型の演奏。

 しかし、再度ですが、そんな国の、そんな指揮者の演奏なのですが、そこに、歴史と、いろんな背景があるんです!

それが、おもしろい♪

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2015年3月 4日 (水)

神奈川フィルハーモニー県民ホールシリーズ第3回定期演奏会 川瀬賢太郎 指揮

Kaikouhiroba

県民ホールでの演奏会の前に、ちょっと手前に回り込んで、開港広場から、みなとみらい方面をパチリ。

この日は、時間があったから、関内駅から、伊勢佐木町をふらつき、馬車道、かつて会社の支店のあった相生町あたり経由で、ハマスタで祈願し、県庁を仰ぎみての日本大通り、山下公園からの、県民ホール。

途中、県庁も横切りましたが、ここは、小学生時代、県民学習遠足かなにかで来ましたね。
大きな会議場や、屋上からの港の眺めを、いまでも覚えてます。
長洲知事の時代でした。

「やきとり」の看板の誘惑に、何度も負けそうになりつつ、「あっ、今日はチャイコだ!」と胸に念じつつ、魅惑の街並みを散策。

一直線でホールに行く「みなとみらい」にくらべ、県民ホールは、このように、アプローチの仕方が、多様にあって、ちょっと遠いけど、とても楽しい。
 「音楽堂」もそうですが、なんたって、四季おりおりの横浜が楽しめる立地ですからね。

神奈川フィルの魅力が、こうして、いろいろ楽しめる。
都内のオーケストラには、絶対にない高付加価値ですね!

みんな、来てよ! 横浜に、神奈川フィルを聴きに

そして、3月3日の定期演奏会。

Kanaphill201503

   チャイコフスキー  ヴァイオリン協奏曲 ニ長調

         Vn:郷古 廉    

               交響曲第5番 ホ短調

      川瀬 賢太郎 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団

         ~アンコール~

   バッハ        無伴奏ヴァイオリンソナタ第2番 第2楽章

    チャイコフスキー  交響曲第4番 第3楽章

                   (2015.3.3 @神奈川県民ホール)


オール・チャイコフスキー。

2週間前の2番の交響曲「小ロシア」から、しっかりリンクしてて、われわれ聴き手は、川瀬&神奈川フィルの描き出すチャイコフスキーを、すっかり、耳にしみ込ませることとなるのでした。

この日の、2日前、ミューザでも、同じ演目が取り上げられました。

 まずは、今年21歳の郷古さんの弾く協奏曲。

いやはや、とんでもなく、感服しましたぞ。

この聴き古された名曲、へたすりゃ通俗名曲とも言われかねないヴァイオリンの定番協奏曲を、ここまで、堂々と、王道ゆく演奏してしまう若者とは!
 コンサートの前座、楽しみは後半、などと、不詳思ってた自分を恥じました。

なみなみと豊かに、ほんの一丁のヴァイオリンが、この大きなホールを、その音で満たしてしまう。
艶もありつつ、一音たりともブレがなく、しっかり地に付いた音を、名器ストラディバリからすんなりと引きだしてる。
その滔々たる豊穣な音色に、聴き惚れつつも、若さに似合わず、音楽の核心へと果敢に切り込んでゆく強さも感じました。
 自分の息子と同じような世代が、このような豊かな表現能力を、巧まずして兼ね備えつつ、技巧の限りを楽々と尽すとは・・・・・。

川瀬さんの指揮する、繊細かつ、大胆に盛りあげる神奈フィルは、若い郷古さんとの息もぴったり。
 

若さならではのフレッシュさと、年に似合わぬ求道的な姿勢。

この難しい両立を成し遂げていたかに感じた郷古さん。
歳を経て、いろいろな人生作用が、いかに彼にどんな風に及ぼすか、そういう意味でも、興味深いです。

バッハのアンコールでは、思わず、落涙したくなるような感銘を受けました・・・・

 さぁ、チャイ5。

大好きこの曲。

自分の血肉と化した、この曲を神奈川フィルで聴くよろこびといったら、ありません。

かつて聴いた、現田さんの指揮では、ロシアのメランコリックな憂愁と、爆発的な解放感とが、たくみに融合された、オペラティックな輝かしい演奏だった。

そして、今回の若きマエストロ、川瀬さんのチャイ5は、若さならではの閃きが随所に、そう、彼が感じたまんまのフレッシュな感性そのままに、曲中いたるところに表出していたのを感じとることができたのも、最愛のこの曲ゆえだからでしょうか。

終わってみたら、全曲は、約52分。
この作品にしたら、長いです。
1楽章と2楽章で、34分ぐらい。

そう、この前半のふたつの楽章に、思い入れを込めて、各フレーズのタテヨコを、とても丁寧に歌いあげていった結果です。
 冒頭の暗い運命の動機からして、わたくしの聴く音源たちからすると、少しゆったりで。
そのあと、テンポをあげつつ、全オーケストラにひろがって行くサマは、もう、聴いていて、わくわくしましたし、気持ちが大いに盛り上がりました。
 

 2楽章の抒情とロマンが、すっかり身にしみるようになりました。
でも、泣き節は、もう困るから、明るく伸びやかな歌い回しが好き。
今宵は、ホルンの美加ちゃんが、あの息の長い旋律をがんばりました。
ブリリアントでした、オケの音色の公約数をちゃんと引き継いで、かなフィルのホルンの音色を、しっかり出していたと思います。
 先輩たちに暖かくフォローされ、実加ちゃん、神奈フィルの顔を引き継いでますね!

チャイコフスキーは、管のソロが多いから、それぞれみなさんを知りつつ応援していると、わくわくと、どきどきの連続ですよ。

この日は、いつものように、みんな素敵だった。

そして、思いきりに歌いまくる弦楽器のみなさん。
いつもお馴染みの方々が、この素晴らしい曲に打ち込んで、全霊を込めて演奏している姿を、見つつ、音楽の感興を高めてゆくのも、ライブ演奏会ならではです。

1・2楽章を、アタッカでつなげて、より、抒情と幻想味を引き出した川瀬さん。

3楽章は滑らかにスムージーに、でも、こだわりの歌も、ちょいちょい引きだして新鮮。

そして、4楽章は、キリリと、疾走感もまじえて、ずばずばとした音楽造り。

構成的に、いびつな、チャイコフスキーの交響曲の常で、終わってしまうと、華々しい終楽章のなかに、前半を忘れてしまうことが多々。

そんな聴き手の反省に応えてくれたかのような、前半志向の表現力豊かなチャイ5。

めちゃくちゃ、おもしろかったし、これなら、音源として、繰り返し視聴に耐えうる精度も持ち備えた演奏だと思いました。

 協奏曲も、交響曲も、大きな拍手でしたし、各種ブラボーも盛大な夜でした。

ナイスな、アンコールがあるのも、特別演奏会がセットになっている今回の定期ゆえ。

つなぎで、4番のフィナーレも聴きたくなるという、渇望さえも呼ぶ、オール・チャイコフスキー・コンサートでした!

 川瀬さんは、チャイコがいいぞ

まいどのことで、すいません。

興奮やまず、喉も渇き、飲みましたぞ。

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雨がパラパラの状況もあり、駅近で・・・

みなさん、おつかれさまでした

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2015年2月 8日 (日)

チャイコフスキー 交響曲第5番 ロジェストヴェンスキー指揮

Hamamatsucho201502_a

しゅわっ~っち!

2月の小便小僧は、ウルトラマン一族から、ウルトラマンジャックさん。

JR東日本のキャンペーン、ウルトラマンスタンプラリーに連動して、このコスプレ。

あいかわらず、今月も、いい仕事してます。

Hamamatsucho201502_b

うしろ姿も、まんま、ウルトラしてる。

わたくしは、ウルトラマン世代だから、こちらのジャックさんは、まったく知りません。

というか、セブンで終ってるかも。

小学生のときに、ウルトラQで、中学で、セブンで、そのあとは、よくわからない。

ウルトラマンよりは、ウルトラセブンの方が、内容も深かったりで今ではとても印象に残ってますね。

浜松町の駅には、これもありますよ。

Jack

ちなみに、スタンプラリーは、なかなか壮大なもので、全64駅。

わたくしは、早々に断念してしまいました。

というわけで、月イチシリーズは、今月はチャイ5。

P2073124

 チャイコフスキー  交響曲第5番 ホ短調 op64

   ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮 ロンドン交響楽団

                  (1987.2 @ロンドン、オールセインツ教会)


いま、調べたら、おなじみの、ロジェヴェンさんこと、ロジェストヴェンスキーの正式なお名前は、ゲンナジー・ニカライエヴィチ・ロジュジェストヴェンスキーなんだそうな。
たしかに、ジャケットとか見ると、そう書いてある。
「ジュ」がひとつ入るだけど、とてつもなく、呼びづらい名前になってしまう。

そんなロジュジェヴェンさん、いやめんどうだから、ロジェヴェンさんのチャイコフスキー5番は、複数の録音がありますが、一番の有名どころでは、モスクワ放送響との70年代の録音。
正規盤には、その次に、BBCライブ、こちらのロンドン響があって、そのあと、ソビエト文化省管とのものがあります。

 ロシアのオーケストラ、ことにソ連時代のその響きは、わたくしは、どうにも苦手で、ネタで聴くときはあっても、ふだんはなかなか聴きません。
まるで、ねじ込まれるようなアジる金管、ぶっとい弦の響き、濃い口の木管・・・・・。

そんなイメージに覆われていて、その典型が、モスクワのオケだと思いこんでました。
これからも、あまり聴くことはないと思いますが、たまに、刺激を求めて聴くのもありかな・・・・って感じ。
 でも、いまのロシア系のオケは、西欧化してしまいましたね。
とくに、Gさんのキーロフなんか特に。
これもまた、面白くないという贅沢を言うわたくしですから、ちょっと支離滅裂ですな。

というわけで、わたしの持つ唯一のロジェヴェン・チャイ5は、ロンドン響との録音なのです。
さすがは、曝演大魔王、ロジェヴェンさんですから、ロンドン響から、かなり濃い味の音を引き出してます。
それでも、イギリスのオケだったから、わたくしには、ほどほどに中和されて、ちょうどよく感じるのでした。

思えば、この録音がなされた1987年は、クラウディオ・アバドが、首席指揮者だった年。
その機能性を活かしつつ、明るくしなやかな響きをLSOから引き出したアバド。
その様子と、ここで聴くロジェストヴェンスキーの導き出す音たちは、当然にまったく違っていて、指揮者がオーケストラにもたらすものと、また、ことにLSOというオケの持つフレキシビリティの高さに感心をすることになるのでした。

・演奏の様子

 まさに運命の主題が、ロシアの大地からわきあがってくるような、暗欝な重々しい1楽章の冒頭部。
その後の盛り上がりぶりとの対比も、この指揮者ならではの明確さで、ともかく、棒さばきがとても上手く感じ、微妙なテンポの揺らしも心憎い。

 ゆったりと、そして朗々と、泣きのホルンを聴かせるのは、当時の首席デイヴィット・クリップスでしょうか。
当時のLSOは、綺羅星のような名手が、各セクションにおりました。
オーボエのキャムデン、フルートのロイドなどなど。
彼らの、ブリリアントな名人芸を楽しめるのが、ことに第2楽章。
ロジェヴェンも、思いの丈を、ここでは披歴してまして、かなり感動的です。

 流れのよろしい3楽章は、リズムの按配がとてもよくって、バレエでも踊れちゃいそう。
よくよく聴くと、いろんな隠し味もあるけれど、もっと色っぽくてもよかったかも。

 
 以外に大人しい終楽章の入り。
しかし、ここでも、リズミカルな拍子のよさが際立ち、弾むような主部の展開は、心躍ってくる。あぁ、なんて、乗せ上手なんでしょう、ロジュジェジェジェさん♪
要所要所を、ぐいぐいと責めつつ、面白さがどこにも転がっていて、飽くことなく曲は進みますが、基本は王道の責め。
奇抜なことはやってません。
しかし、コーダの無類のカッコよさにはまいりました。
大見栄をきったトランペットの強奏。
全オケ全力投球。
でもうるさくならないのが、LSOでよかった。
タメも充分、堂々たるエンディングに、日頃の鬱憤も晴れる思いです。

 ロジェストヴェンスキー、ほんとうに、うまいんだから♪




                   
              (Euro Artsより たぶんシュニトケの曲)

今年、84歳になる大巨匠。
この活動歴の長い指揮者は、70年のボリショイオペラとの来日以降、読響との共演も含めて、何度、日本に来てくれたことでしょう。
長い指揮棒に、指揮台に立たずに、楽員と同じ平土間立ち。
世界中のオケとの親密な関係を背景に、広大なレパートリーを誇る、器用さとバランス感覚に秀でた名指揮者であります。

フランスからは、レジオンドヌール勲章、日本から、旭日中綬章。
ストックホルムの名誉会員、そして、英国からCBE勲章。

いつまでも、ご健在であって欲しいですね。
 

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2014年12月18日 (木)

幻想&チャイ5 ヤンソンス

Hamamastucho1

はいはい、お約束の小便小僧サンタさん。

12月は、必ずサンタになりますね。

それでも、このコスプレをされているボランティアの皆さんは、手を抜きません。
毎年違うんです。

Hamamatsuchou201012  Hamamatsucho_201112_c

    2010年                    2011年

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   2012年                     2013年

ずっと毎月、撮り続けてる小便小僧クン。

そして、毎月、幻想に始まり、いまは、チャイ5も加えて聴いております。

継続は、ときに正直、厳しいときもあり、でも楽しいです。

こうして楽しませていただいているのも、小僧クンに毎月衣裳を合わせていらっしゃる方々あってのこと。

ありがとうございます。

そして、今月は、特別に、「幻想」&「チャイ5」でまいります。

それも、先ごろ来日して、安定の熱くも音楽的な演奏を繰り広げたヤンソンスとバイエルン放送響の録音で。

Berioz_jansons

  ベルリオーズ  幻想交響曲

   マリス・ヤンソンス指揮 バイエルン放送交響楽団

            (2003.10ライブ@ガスタイク・ホール、ミュンヘン)


ヤンソンスの幻想は、全部で4つ。

コンセルトヘボウとのEMIスタジオ録音盤(91年48歳)、ベルリン・フィルとのヨーロッパコンサートライブ映像(2001年58歳)、バイエルンとの一般発売なしライブ盤(2003年60歳)、バイエルンとの最新ライブ(2013年70歳)。

4つめのBRクラシックから出た演奏は、まだ聴いてませんで、その存在を最近知ったばかり。
今日、あらためて聴いた2003年盤が素晴らしいものだから、もういいかな、と思って、今回はスルーしましたが、やはり聴いてみたいな。
いずれの機会に。

今回のCDは、以前にもご紹介しましたが、2007年の彼らの来日公演で入手しました。
そしてその前、2005年のこのコンビでの来日では、幻想の実演を聴いております。
 そのときのライブは、凄かった。
オケがノリにのって、ヤンソンスの指揮に、まさにのせられてイケイケどんどんの幻想。
それでも、音楽性は失われずに、磨きぬかれた洗練された音は輝いてました。

その印象とほぼ一緒、そして、少し荒削りにしたような力強さと、一気呵成の若さも感じるのが、2003年のライブ。
ミュンヘンのオケに特有の暖かさをたたえつつも、機能的かつ克明なアンサンブルは、聴いていて爽快そのもの。
 野の情景など、惚れぼれとしてしまう抒情と、半面の急展開の激しさの鮮やかな対比。
興奮すべき、終楽章のエンディングは、もっと激しくやって欲しいという聴き手の気持ちと裏腹に、じっくり鮮明・克明な描き方。
シンフォニーとしての容を巧みに描きだした「幻想」なのです。

Tchaikovsky5_jansons

 チャイコフスキー 交響曲第5番

   マリス・ヤンソンス指揮 バイエルン放送交響楽団

             (2009.10ライブ@ガスタイクホール、ミュンヘン)


84年(41歳)の、オスロフィルとの全曲録音の一環と、このバイエルン盤の2種。

レニングラード・フィルとのいくつかの来日公演で、86年に指揮していますが、ヤンソンスのチャイコフスキーで、録音に残されているものは、いずれも、ヨーロッパ仕様のチャイコフスキーだと思います。

ワタクシのエアチェックライブラリーのなかにある、唯一の、ヤンソンス&レニングラードフィルの音源は、ショスタコの5番とチャイコの4番です。
ソ連邦崩壊前の、86年の演奏ですが、これがまたスピーディで、パワフルで、凄まじい。
一度聴いたら、お腹いっぱいの高カロリー演奏ですが、それより前のオスロとの演奏は、もっとあっさり感があるところが面白いです。

親父も指揮したレニングラードだけど、ムラヴィンスキーは来日不能となったものの、当時はまだ健在だったオーケストラ。
やはり、若いヤンソンスは、勢いで行くしかなかったのか。

 その後の、オスロや、ピッツバーグでの度重なる来日を、いずれも聴くことはできませんでしたし、おそらく、チャイ5も指揮したものと思いますが、ロシア的な濃密さとは遠い、機能性に富んだ、そして、ヤンソンスならではの、輝かしく熱い演奏が繰り広げられたはずです。

円熟のヤンソンスが手にした、ふたつの、もっともヨーロッパ的なオーケストラ、コンセルトヘボウとバイエルンは、いずれも、その黄金時代を築き、築きつつありますが、ラトヴィア生まれのヤンソンスが、脱ロシア志向であることは見逃せません。

バルト三国は、一時はソ連でしたが、やはり、ヨーロッパなのだな、と強く認識。

そんなヤンソンスとバイエルンとのチャイコフスキーは、後期の3つの交響曲がライブ録音として残されてますが、それらがいずれも、堂々としつつ、新鮮かつクリアーな明確な演奏なのです。
 オーケストラの優秀さも、随所に感じつつ、ここでは、チャイコフスキーの音楽の歌い回しが、ヤンソンスの感じたまま、奔流のようにして流れでております。
ちょっとしたフレーズにも、ほかの演奏にない、わずかな違いや、個性が、よく聴くとあわらわれまして、45分間、この作品が好きな人間には、飽くことなく、かつ新鮮に感じられる演奏です。
 1楽章が、こんなに素敵に、かっこよく響くのもヤンソンスならではだし、バイエルンの澄み切ったかっこいいサウンドが実に心地よく耳に届きます。
2楽章も、カラヤンのような美意識とは遠いところで、ナチュラルな美しさを保ちつつ、かつ熱いです。
 優美なワルツに、スマート極まりない終楽章。
思わず、指揮棒が欲しくなるような、乗せられちゃうチャイ5に、後半に行くにしたがってなってまいりまして、かつてのように、突っ走ることもなく、堂々と、ごく自然なフィナーレを築きあげることとなります。

普通に、いいなぁ、という名演です。
個性的ではありませんが、高度な名演です。

コンセルトヘボウとも、バイエルンとも、チャイコフスキーの全曲は残して欲しいものです。

ちなみに、次期を更新しなかったコンセルトヘボウは、次はガッティ。
うーーむ。
また、シャイーみたいになるのかなぁ・・・・

オランダの音楽界は、どうも、わかりません。
でも、ハイティンクのあと、コンセルトヘボウは、もう違うオーケストラとなってしまったといっていいかもしれません。

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