ベルリオーズ 幻想交響曲 ティチアッティ指揮
10月の小便小僧は、もろ、ハロウィーンでした。
本来は、ケルトに由来する季節の変わり目を意識した、収穫祭プラス魔除け的な宗教儀式だったハロウィーン。
かつては、アメリカの物量的な豊かさの象徴的なリッチなお祭り、みたいに自分には映っていて、「奥さまは魔女」とか、ピーナッツの漫画「スヌーピー」で観て、そんなものがあるのか的な遠い事象でした。
しかし、気づけば、わが日本では、そんな由来・起源なんて、まったく関係なく、クリスマスやバレンタインを宗教性とは無縁のカレンダー上の季節のお祭りにしてしまった国柄ですから、毎年、大盛り上がりとなっております。
まぁ、それはそれでいいとして、わたしのようなオッサンは、ただそれを眺めるだけで、お部屋で静かに音楽でも聴いているに限りますな、秋の夜長ですからして。
今年の10月31日は、土曜日ですから、さぞかし賑やかな終末になることでしょうな。
浜松町の小僧クンも、ほれ、ご覧の通り、かわゆくなってますよ。
ほんと、よく出来てる。
ベルリオーズ 幻想交響曲 op14
ロビン・ティチアッティ指揮 スコットランド室内管弦楽団
(2011.10 @エディンバラ)
今月のツキイチ幻想は、若手ホープ(古い言葉かな)の、英国指揮者・ティチアッティの指揮で。
9月は、忘れてしまい、1ヶ月サボりました。
さて、ティチアッティは、1983年生まれのイタリア系のロンドンっ子で、祖父は、作曲家。
父は弁護士、母は理学療法士、兄はヴァイオリニスト、姉は神学者といった、錚々たる優秀な家系のもとあって、もともとは、正規の指揮の勉強は受けておらず、ヴァイオリンやピアノ、打楽器をユースオケで演奏しつつ、15歳くらいから、指揮も始めたそうな。
ラトルとC・ディヴィスに学んだのは、その豊かな家系からくる恵まれた環境だったからかもしれませんね。
指揮者としては、2005年にデビュー。
その後、ムーティとスカラ座に迎えられるという栄誉を得て、2007年には、スゥエーデンのイエグレといい都市のオーケストラの首席指揮者に就任。
グラインドボーンのツアー指揮者もつとめ、2010年には、スコットランド室内管の首席、バンベルク響の首席客演、2014年には、ユロフスキのあとを受けて、グラインドボーンオペラの音楽監督に就任してます。
順風満帆の32歳。
客演の状況を見てると、スカラ座、コヴェントガーデン、ゲヴァントハウス、バイエルン放送、ドレスデン、チェコフィル、フィラデルフィアと、まさにすごい。
ですが、この人、その音楽造りも、大胆ななかにも、以外と慎重派にうかがえ、かつてのラトルのように、英国にとどまり、じっくり大勢していくのではないかと、期待も込めつつ思っています。
いまの世界の指揮界、若返りも急で、オーケストラ地図も欧米ばかりじゃなくなり、有望株は奪い合いとなっているので、ティチアッティ君も、メジャーポストにひっぱり出されてしまうかもしれませんね。。
さて、その彼の音楽ですが、昨今のトレンドのとおり、古楽奏法もしっかり体得し、ピリオドを適宜用いた解釈から、現代作品まで、幅広いレパートリーを築きつつあります。
同時に、ティチアッティの強みは、オペラが振れること。
実験的な要素も試せて、かつ伝統の強みもあるグラインドボーンのポストは、ますます彼のオペラ解釈を強くすることでしょうし、一方、手兵のスコットランド室内管の機動力と柔軟さが、彼のやりたいことを叶えてくれる環境を築いてくれることでしょう。
2011年、まだ20代だったときのこちらの「幻想」。
ヴィブラートを控え気味に、ツィーツィーっという、この曲にしては耳新しく、新鮮かつ大胆な奏法が各所で目立ち、そうした意味で、いろんな発見もあります。
だが、思ったよりは、まっとうで、同じピリオドでも、かつてのガーディナーとか、ミンコフスキの方が、もっと大胆だった。
このあたりの中庸さは、実は見通しのよさと、しなやかな旋律の歌わせ方、全体の構成感の豊かさにつながるものとして、わたくしは受け止めました。
アバドからラトル、ハーディングにつながるものを感じます。
全曲で繰り返しを入れて、約53分。
ちょっとゆっくり目ですが、速いところは大胆でスバズバ行きます。
断頭台は揺るぎない歩みですが、切れば血の吹きだすような鮮度の高さと強さがあり。
終結のヴァルプルギスでも、過剰な熱狂に溺れることなく、音楽の生々しさを追求しているようで、明るさすら感じる白日感がありました。
そして、一番気に入ってるのが、野の情景のしっとりとした抒情的な演奏です。
室内オケということもあり、ほんと瑞々しく、そして美しい景色が広がってます。
今後がますます楽しみなティチアッティ。
すでに、ベルリオーズ・シリーズや、シューマンの交響曲、新世界やブラームスの渋いところ、オペラもいくつも出てまして、われらが、川瀬賢太郎さんとひとつ違いの、この若者の演奏も川瀬君とともに、追いかけてゆく楽しみがひとつ増えました。
最後に、来シーズンの神奈川フィルのオープニングは、川瀬・幻想ですよ
むふふ
過去記事
「モーツァルト 後宮からの誘拐 Proms2015」
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