カテゴリー「イタリア音楽」の記事

2017年11月25日 (土)

レオンカヴァッロ ピアノ曲集 ミュラー

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もう一月まえだけど、ハロウィンの晩のダイアモンドヴェール東京タワー。

あの仮装姿とことに澁谷の喧騒はどうかと思うが、日本のハロウィンは、世界にも稀なお祭りとなったことは事実で、これはこれで平和でよいことであります。

しかし、世界は不穏です。

それはともかくとして、明るく伸びやかな音楽を。

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    レオンカヴァッロ  ピアノ作品集

    Romanesca      

  ②
Serenade-Valse for Piano Deux Pieces de style Arabe

  ③Sous les palmiers  Bohemienne

  ⑤Tarantella       Gondola

  ⑦Pantins vivants    Barcarola veneziana

    ⑨Minuetto                 Valse mignonne

    ⑪Cortege de Pulcinella Au bord du Lac

    ⑬Papillon                   Invocation a la Muse

    ⑮Valse a la lune

             ピアノ: ダリオ・ミュラー


ルッジェーロ・レオンカヴァッロ(1857~1919)のピアノ曲を。

いうまでもなく、「パリアッチ」=「道化師」の作曲家のレンカヴァッロですが、マスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」とともに、そしてセットで、「カヴァ・パリ」とひとくくりにされて、ヴェリスモオペラの代表作とされるが、彼らふたり、ことにレオンカヴァッロの方は、それ以外の作品がまったくといっていいほどに日陰者扱い。

わたくしは、ヴェルディ以降の、プッチーニ世代のイタリアの作曲家たちを、こといふれ聴くようにしていて、レオンカヴァッロについては、もうひとつの「ラ・ボーエム」や、美しい「五月の夜」を取り上げたりもしたほか、いくつかのオペラを聴いていて、いつか記事にしたいと思ったりもしてます。

そんななか、ここ半年ほど、ながら聴きなどもしながら馴染んできたのが、ピアノ曲の数々です。

レンカヴァッロは、なかなか多才な人で、作曲家であると同時に、脚本家でもあり、自身でも優れたピアニストでもあった。
若い頃のパリでの生活では、歌唱のレッスンとともに、カフェでのピアノ弾きを楽しんでいたようで、この頃(1882~89)の体験も、そのオペラやこちらのピアノ作品などに生かされているわけであります。

このCDに収められた15曲に、ひとつひとつ印象を語るのはやめときますが、全曲、ともかく歌心にあふれ、簡易な優しいメロディーなので、1度聞いたらすぐに覚えちゃう、いや、どこかで聴いたことがあるような曲だと思えちゃうし、センチメンタルな切ない曲なんかもあって、お酒なんかを嗜みながらぼんやり聴くのもいいのだ。

 そんななかでも、特徴を、CDの解説などをふまえて述べれば、先に触れたパリ時代、その頃の19世紀末のサロンミュージック的なバラエティ豊かなおしゃれなテイスト。
そこにイタリアのオペラの伝統や、ローカルな民族音楽、コメディア・デラルテ由来のもの、などなどがふんだんに盛り込まれています。

あと、自身の作品からの転用もあって、「五月の夜」の3楽章から⑬とか、6楽章から⑭といった具合。
しかし、パリアッチからは、さすがにないのは、それ以前に大方が作曲されているからか・・・。

スイスのルガーノ出身のピアニスト、ミュラーは、明快なタッチで、とても心地よく、これらの素敵な作品たちを聴けせてくれます。


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ドミンゴの「五月の夜」の余白に、ラン・ランがピアノ作品を2曲録音してますが、そちらはずっと雄弁で、実にうまいもんだと思わせますが、わたくしは、ミュラーの小粋な感じの演奏の方が好きだな。

レオンカヴァッロも、マスカーニも多面的に聴いてみて、その作曲家の神髄を味わってみたいものです。

過去記事


 「五月の夜 ヴァグリエリ指揮」

 「ラ・ボエーム  ワルベルク指揮」

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2015年9月15日 (火)

マルトゥッチ ピアノ協奏曲第1番 カラミエッロ

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夏の終わり、8月の後半には、もう、キバナコスモスが咲きだし、今頃が旬でしょうか。

パステルの上品なコスモスと違って、オレンジがかった、このキバナコスモスは、ちょっと色気もあったりしますな。

グリーンととてもよく合う。

そう、もう呼ばなくなってしまった、かつての湘南電車のカラーリングなんです。
いまや、上野東京ラインとか、湘南新宿ラインとか、遠くの呼び名が興ざめだったり・・・・。

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  マルトゥッチ  ピアノ協奏曲第1番 ニ短調

      Pf:フランチェスコ・カラミエッロ

    フランチェスコ・タヴァロス指揮 フィルハーモニア管弦楽団

                        (1988? ロンドン)


ジュゼッペ・マルトゥッチ(1856~1909)は、イタリア中南部カプアに生まれた作曲家・指揮者・ピアニストであります。

知ってる人は知ってる。
そういっとき、そこそこ流行ったからです。
1980年代、忽然と姿をあらわした、ナポリ生まれのベテラン指揮者、タヴァロスが、ブラームスやメンデルスゾーン、ワーグナーを積極的に録音し、そこに混じって、われわれには、あまり馴染みのなかったマルトゥッチという作曲家の作品をいくつも取り上げたからです。

タヴァロスは、昨年亡くなってしまったようですが、同じナポリの後輩、リッカルド・ムーティも、このマルトゥッチの作品の紹介には熱を入れ、ウィーンフィルとの来日公演でも、その作品を取り上げたりもしたのでした。

遅ればせながら、本ブログでは、初マルトゥッチとなりました。
今後、シリーズ化しますよ。

マルトゥッチは、軍楽隊のトランペット奏者だった父ガエターノに音楽の基礎を学び、まずは、ピアノに本格的に取り組みました。
まずピアニストとして活躍し、ナポリ音楽院の教授ともなり、やがて、指揮もとるようになり、おもにナポリの劇場で広大なレパートリーをものにするようになります。
 リュリやラモーといったフランスバロックから、当時の同時代音楽である、ドビュッシーやR・シュトラウスなどを積極的に指揮したほか、なんといっても、ワーグナーには力を入れてます。
1888年、ボローニャにおけるトリスタンのイタリア初演や、ナポリでの上演。
さらに神々の黄昏も、ナポリで上演する快挙をやってます。

イタリアオペラ中心だった、当時の楽壇において、ワーグナーを南イタリアにおいて取り上げること自体、すごいことだったと推量します。

マルトゥッチの存在は、ヴェルディ以降、いやでも続いたイタリアオペラ中心の楽壇にあって、器楽・オーケストラ作品のみに力を注いだ点が特筆すべきところです。
なんといっても、レオンカヴァッロ、プッチーニ、マスカーニらと、ほぼ同世代だったのですから!
 そして、彼の弟子筋からは、レスピーギがうまれ、器楽とオペラの両立を果たすことになるのでした。

 今宵のピアノ協奏曲第1番は、1878年の作品で、作者23~4歳にかけて。
パリの地で、ピアニストとして、ときに、チェリスト、ピアッティの共演者として演奏活動をする傍ら、書かれた作品です。
 16歳の頃から作曲をしていて、それまでにも、器楽・室内楽をいくつか手掛けてましたが、大きな作品としては、この曲が唯一。
 しかし、生前は出版されず、1973年になってようやく出版の暁となりましたため、この曲には、作品番号がありません。

1楽章15分、2,3楽章、それぞれ10分という、大作。
前後のふたつは、堂々とした、オーソドックスなソナタ形式。

ともかく、外見は、ブラームスの1番ばりの大曲に見えますが、でも、あのようないかつさは、まったくなく、全編、歌に満ち溢れ、親しみやすい旋律が滔々と流れる美麗なる協奏曲なのであります。

なんたって、オペラアリアのように、窓辺で歌うセレナードのように、優しく美しい第2楽章が素敵すぎるんです。
聴きようによっては、チャイコフスキーの同じ協奏曲の第2楽章のような甘味さもあります。
でも、ここにある景色は、あくまで、南イタリアの澄み切った空。
ちょっと、爽やかな柑橘系の飲み物でも合わせたくなるような感じですよ。

15分もかかる第1楽章は、その出だしこそ短調で、荘重な感じですが、すぐさま、麗しの旋律で満たされていきます。
超絶技巧のピアノも、楽しいです。
リストや、シューマンなども思い起こすことができます。
マイナーな調だけど、でも、明るく、その明晰さが曇りなく、スコアの隅々が照らされ輝くようです。

美しい2楽章をはさんで、3楽章は、最初の楽章と曲調が似ていて、ちょっと単調になりがち。
このあたりの構成感とか、聴かせどころの築き上げ方は、後年(7年後)の2番の方に、大きく歩があるかも。
ここでは、誰かと言えば、グリーグとシューマン、ドヴォルザークっぽいかな。

ともあれ、マルトゥッチの流麗な音楽を堪能できました。

ナポリ生まれのピアニストと、指揮者の共演、次はまた2番を取り上げましょう。

さて、第2楽章をまた聴いて休むとしましょう。

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