ラヴェル 亡き王女のためのパヴァーヌ アバド指揮
家を出て南に歩くと10分ちょっとで相模湾です。
満月も近かったこの日、東の空にはきれいなお月様。
冬の海は寒いけれど、澄んだ空気と波の音で脳裏も冴えわたります。
ちょっと忙しくて、数日遅れとなってしまいましたが、1月20日は、クラウディオ・アバドの命日でした。
2014年1月20日、あの日から11年となりました。
「アバドの誕生日」の6月には、毎年いろんな聴き方でアバドを聴くのが常でしたが、そこにまさかの「アバドの命日」というまた特別な日ができてしまった。
それは悲しみの日ではありますが、たくさんの音楽を聴かせていただき、ありがとう=感謝の日でもあるんです。
今年は短めの曲で、しかもこれまで取り上げてなかった曲で。
ラヴェル 亡き王女のためのパヴァーヌ
クラウディオ・アバド指揮 ボストン交響楽団
(1970.2.2 @シンフォニーホール、ボストン)
ラヴェル 亡き王女のためのパヴァーヌ
クラウディオ・アバド指揮 ロンドン交響楽団
(1985.6.10 @ワトフォード・タウンホール、ロンドン)
ラヴェルの感傷的で瀟洒な作品、アバドは録音初期の70年と世界的な指揮者となった80年代のラヴェル全集の一環とで、2度の録音があります。
短い作品なので、演奏時間などに差異はないですが、強いて比較すると、ロンドンでの方がやや短め。
1958年にクーセヴィツキ指揮者コンクールで優勝したことで、同年にボストン響をタングルウッドで指揮。
7月公演の演目は、「未完成」で他の指揮者と振り分けたお披露目コンサートだった様子。
さらにその夏には、アバドの単独の指揮で、プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲、モーツァルトのクラリネット協奏曲、チャイコフスキーのロメオというプログラムを指揮している。
ボストン響のアーカイブ情報は充実していて、詳細にタイプ文章が残され公開されているのです。
ちなみに、ボストン響への定期への正規登場は1970年の1月で、このときに、ラヴェルとドビュッシーが演奏され、DG録音も行われている。
このときの他の曲目では、シューマンの4番という録音されなかった曲が目を引くし、プロコフィエフ3番や、ドホナーニ作品、バルトークのピアノ協奏曲など、いかにもアバドらしい作品ばかりで、それらの録音が残っていないか気になるところです。
ボストン響への客演は、その後もさほど多くはなかったですが、残された2枚分の録音を聴くに、いまもってシカゴと同様、オーケストラとの相性は非常によかったと思います。
ボストンで指揮をした曲目は、ほかではやはりマーラーです。
2番、3番と7番もあり、小澤さんの在籍時だったので、録音は望めなかったのですが、まじに聴いてみたかった。
ロンドン響との演奏は、リアルなラヴェルで、ボストンとのものは、オーケストラの伝統に則したヨーロピアンでエレガントなラヴェル。
そんな風に思いながら聴きました。
ホールトーンの美しさを活かした録音も、ボストンのものは特筆すべきで、アナログ時代のもっとも良き調べを感じる。
ほんとうに優しく、歌うように演奏する当時36歳の若さあふれる指揮。
より緻密に正確に響きを捉えた端正な演奏がロンドン盤で、アバドは52歳になる直前。
ロンドンを中心に、ウィーン、ミラノ、シカゴで活躍し、指揮界の頂点を極めつつあった時期。
ニュートラルなロンドン響の音色は、ボストンのものに比べると薄味ですが、精緻さにおいては比類ない。
ピアニッシモも美しさ、そこでの歌い口もアバドならではで、ロンドンのオケはアバドの思いに自在に付いて行ってる。
どちらのラヴェルも好きですが、自分的にノスタルジーを感じるのはボストンの方かな。
1970年に発売されたレコードのレコ芸広告。
RCAからDGに専属を移したボストン響、その録音もRCA時代とはまったく一新されたものでした。
小学生だった自分、この広告を見て、おりからのクリスマス時期だったので、この2つのレコードが欲しくてたまらなかったのを覚えてます。
キャッチコピーもなかなか素晴らしいのです。
海の近くの私が通った幼稚園がまだ健在です。
もちろん建て替えされてますが、場所も建物の配置も同じです。
むかしむかし、はるかに昔のことでしたが、不思議といろんなこと覚えているんです。
アバドの命日の記事
2024年「ヴェルディ シモン・ボッカネグラ」
2023年「チャイコフスキー 悲愴」
2022年「マーラー 交響曲第9番」
2021年「シューベルト ミサ曲第6番」
2020年「ベートーヴェン フィデリオ」
2019年「アバドのプロコフィエフ」
2018年「ロッシーニ セビリアの理髪師」
2017年「ブラームス ドイツ・レクイエム」
2016年「マーラー 千人の交響曲」
2015年「モーツァルト レクイエム」
2014年「さようなら、アバド」
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