東京交響楽団定期演奏会 沼尻竜典指揮
サントリーホールのカラヤン広場の一角からパシャリ。
高層ビルや首都高に囲まれたオアシスのような音楽ホール。
東京交響楽団の定期演奏会、この日もほぼ満席でチケットは完売だとか。
へぇ~、と思いつもわかりましたよ
ショパンコンクール入賞、日本を愛するスペイン生まれの若きピアニストがこの日のソリストだったのです。
東響の定期会員になったものだから、予定表にあった日にホールに向かうだけ。
演目は頭にあっても奏者などの情報はその日に知るという感じなものですから。
東京交響楽団 第730回 定期演奏会
バルトーク 組曲「中国の不思議な役人」
リスト ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調 S.124
シューベルト 「楽興の時」第2曲 変イ長調
マルティン・ガルシア・ガルシア
チャイコフスキー 交響曲第4番 へ短調 op.36
沼尻 竜典 指揮 東京交響楽団
(2025.05.24 @サントリーホール)
昨シーズンに沼尻さんは。ポーランドの作曲家で固めたプログラムを指揮、今年は前半がハンガリー、後半はロシアで、民族色をうかがえるという意味では筋の通ったプロであります。
先々週に静岡でアリアドネ、先週はいかなかったけれど、川崎で神奈川フィルとベートーヴェン、そして今回の東響、さらに6月には都響、神奈川フィルでラインゴールド。
なかなかに精力的な活動のマエストロです。
中国の不思議な役人=マンダリンは、組曲になると20分ぐらいだし、ラストも盛り上がるので演奏会では全曲版はほぼやらないだろう。
予想通りに出だしから乱痴気感は少なめで、実にスマートかつ整然とした様相で開始、さすがに東響の鉄壁のアンサンブルで聴きごたえがある。
3人の男たちのそれぞれのミステリアスなシーンの対比がなかなか見事で、木管の活躍も味わいあり。
それにしても、マンダリンの登場にいたるこれらの怜悧でありつつ、熱っぽい音楽を書いたバルトークは凄い曲を残したものです。
誰もを興奮の坩堝へと誘うマンダリンの闘争シーンは、熱いうねりというよりも、音楽の面白さをドラマテックに聴かせるという大人の演奏でありました。
ピアノも活躍、そして正面のパイプオルガンもペダルのみで登場というユニークな編成も確認できましたよ。
赤オレンジのハンカチを握りしめながらガルシア君の登場。
バルトークとリスト、その生年を見ると1811年のリスト、1881年のバルトークで、70歳の違いがあるが、ふたつ並べて聴いてみるとそれ以上の年代の開きを感じてしまった。
より民族臭が強く、大胆かつ過激なサウンドのバルトークに、ロマン派どっぷり、絢爛豪華なリスト。
そんな違いがよくわかる沼尻指揮の東響でありました。
もっと鳴らすことはできたかもしれないが、存外に抒情的なピアノを得意とするガルシア君を引きたてるステキなオーケストラで、トライアングルも抑え気味に感じた。
そのガルシア氏ですが、このピアノには感心しましたね。
人気のピアニストということで、斜に構える思いで聴き始めましたが、鮮やかな技巧は予想通りでリストの音楽の豪華な側面もうまく出しつつ、そこにある詩情にあふれた思索する人リストの一面もその対比としてよく弾きだしてました。
彼のピアノで聴く2楽章の美しさは特筆ものでした。
鮮やかで燦然たるフィナーレでは大胆豪快な弾きぶりもみせ、オーケストラとともに瞬間芸出来な壮大な盛り上がりとなりました。
終わるやいなや、ガルシア君はピアノの椅子から飛び上がり、指揮者の沼尻さんに抱き着きました。
この微笑ましい天然仕草に会場はほんわかとしたものです。
鳴りやまぬ拍手に応えたシューベルトが、これまたすばらしく美しい演奏でありました。
こうした優しく抒情的な作品にこのピアニストの特性があるのかも。
突然と変わるシューベルトならではの死の影のような不穏な雰囲気との対比もなかなかの表現力でございました。
チャイコフスキーの4番。
サマーミューザでノット監督の指揮で聴いたのが2年前。
対抗配置でユニークな演奏を聴かせてくれた前回と違い、今回の東響は通常配置で沼尻テンポはより快速でスマートかつ宿命観も少なめ。
すいすい進む1楽章は快感誘うドライブ感で威圧的な雰囲気もなく、チャイコフスキーの音楽そのものをいい音楽だなと感じつつ楽しませるものでした。
1楽章のコーダで、あんだけむちゃくちゃ強奏してた弦楽器、ピッチとか大丈夫かなと思いつつ、すんなり始まる2楽章では木管奏者のみなさんの橋渡しがそれぞれに見事で適度なメランコリー感もいい感じ。
ピチカートの3楽章、これを作曲したチャイコフスキーの天才性にはまいど驚きますが、今宵の演奏の驚きはこの楽章から。
奔放な演奏をここに感じ、木管が加わってからアクセルが踏まれたようで、いままで抑えていた感情表現がむき出しになってきたようにも。
ノットのときもそんな風に聴いたから、この曲に対する自分の思いや聴き方なのかも、とか思いつつ怒涛の終楽章に。
快速でバシバシ進む指揮者とオーケストラ。
来るぞ来るぞと期待しつつ、その期待以上にアッチェランドをかけ、音圧も高めて熱狂の渦を導き出した最終場面。
いやはや、安全運転で締めくくるかと思っていたら、そうはならなかった大爆発エンディングにブラボー飛びまくり。
いやぁ、満足満足のチャイコフスキー。
バルトーク、リスト、シューベルトと聴いてきて、やはりチャイコフスキーは千両役者だのう。
そうだ、神奈川フィルでのオペラシリーズ、リング継続とオネーギンかスペードの女王も希望しておこう。
※前半には埋まっていた席が空席に・・・
なんでやねん、ちゃんと最後まで聴いてコンサートは完結するんですよ!
いつもお馴染みの神奈川フィルでは見られない、マエストロ呼び出しコール。
県民オケの神奈川フィルでも、われわれ聴き手が頑張ってやればいいと思うし、あと許可して欲しいのがカーテンコール撮影。
ほとんどのオーケストラが、あのN響さまでも、一定のルールのもと、スマホによる撮影が可能になってます。
コンサートの余韻をあとでも楽しめるよすがともなりますし、恒例のお見送りに加えて、聴衆との一体感向上のためにも是非、と思うんですが。
ただ人気者がいらっしゃるので異なる効果が出てしまうということもあるかもしれないが・・
最近のコメント